様々な工事手法がありますが、今回ご紹介するのは「架空配線(かくうはいせん)」についてです。
普段何気なく見上げている電線にも、実は職人の技術と法律のルールが詰まっているんです。
「架空配線」ってなに?架空請求とは違います!

まず、言葉の響きから誤解されやすいのがこの名前。
駐車場、工場、太陽光発電所、資材置き場などの防犯カメラ工事でよく行われるのが、この「架空配線工事」です。
「架空」と聞くと、「存在しないもの、想像上のもの(フィクション)」という意味や、悪い意味での「架空請求」などを想像してしまいがちですよね。
もちろん、工事における架空配線は「存在しない配線」ではありません。ここでの「架空」は、文字通り「空(そら)に架(か)けわたす」という意味です。
皆さんも外に出て空を見上げてみてください。電柱から電柱へ、多くのケーブルが空中に架けわたされ、各ご家庭や施設へ引き込まれているはずです。
つまり架空配線工事とは、電柱やポールを利用して、空中に配線ケーブルを通す工事のことを指します。
事故を防ぐために!絶対に守るべき「高さのルール」
空中にケーブルを通すといっても、好き勝手な高さに配線していいわけではありません。
もし低い位置に配線してしまうと、トラックなどの大型車両が引っ掛けて断線したり、最悪の場合は電柱が倒れるなどの大きな事故につながる恐れがあります。
そのため、施工業者は「引込線地上高および離隔」という明確なルールに従って工事を行う必要があります。
【主な高さの基準】
東京電力エナジーパートナーの規定などに基づき、一般的に以下の高さを確保します。
- 道路を横断する場合(車道上): 地上高 5.0m以上
- 道路を横断する場合(歩道上): 地上高 4.0m以上
- その他の場所: 地上高 4.0m以上
- 交通に支障がない場合: 2.5m以上
ここがマニアック!配線を「あえて」たるませる職人の技術
さて、ここからが少しマニアックな工事の話です。
架空配線を行う際、ただケーブルを張るだけではありません。
強風でケーブルが切れないよう、「支持線(メッセンジャーワイヤー)」と呼ばれる強度の高いワイヤーを先に張り、そこに配線ケーブルを添わせる形で施工します。
そして最大の特徴が、「ワイヤーをあえてたるませる」こと。
電柱と電柱の間の電線を見てみてください。ピンと一直線に張られているのではなく、少し弧を描いてたるんでいますよね?
「あれ、工事に失敗して緩んじゃったのかな?」と思われるかもしれませんが、違います。これにはちゃんとした物理的な理由があるのです。
なぜピンと張ってはいけないのか?
もし電線を一直線にピンと張ろうとすると、張力(引っ張る力)が強くなりすぎます。
そうすると、ケーブル自体が切れやすくなるだけでなく、支えている電柱やポール、建物の金具に凄まじい負荷がかかってしまうのです。
あえて適度な「たるみ(弛度・ちど)」を持たせることで、負荷を逃し、長期間安全に維持できるように計算されています。
配線がたるんでいるのは、技術が未熟なのではなく、「張力計算に基づいたプロの仕事」の証なのです。今度、お家の近くで空を見上げてみてください。「お、良い感じにたるませてるな」と思えたら、あなたも配線マニアの仲間入りです(笑)

